大橋JCT。屋上は緑化して公園として活用する「グリーンジャンクション」で地域の街づくりに貢献する予定
首都高速道路中央環状線の4号新宿線(西新宿JCT)~3号渋谷線(大橋JCT)間が開通して約3カ月が経過、開通によるバイパス効果や経路選択の幅の広がりなど利便性向上が幅広いユーザー層に浸透するとともに、渋滞緩和など想定された交通環境の改善効果も着実に表れている。こうした背景を受けて、生活必需品の食器を中心とする陶業の産業分野においても、首都高速道路中央環状線延長(中央環状品川線・2013年開通予定)までを視野に入れた首都高速道路ネットワークの強化を前提に、迅速かつ定時性向上を目指した物流再構築の動きが出始めている。
中央環状線は、都内区部の主要拠点を結ぶとともに、放射方向の道路と組み合わせることによって、首都高速道路全体でバランスの良い利用を可能とする総延長約47㎞の路線。このうち西部の5号池袋線・熊野町JCTから4号新宿線・西新宿JCTを経て3号渋谷線・大橋JCTに至る区間が中央環状新宿線(山手トンネル)である。熊野町JCT~西新宿JCT間(6.7㎞)は2007年末に開通、残る西新宿JCT~大橋JCTの4.3㎞が今回開通した区間である。中央環状線が東名高速道路につながる3号渋谷線と接続したことで都心環状線を経由せずに、東名と東北道・常磐道がアクセス可能となるため、時間短縮や状況に応じた経路選択、交通分散による首都高速道路および一般道路の渋滞緩和も期待されている。
首都高速が試算した予測値によれば、東名から東北道へ乗り入れる場合、東名・用賀~都心環状線~東北道・川口の従来ルートは距離が約42㎞で58分を要していたが、中央環状新宿線を経由すれば、距離約37㎞で要する時間は40分。東名から常磐道・三郷への乗り入れも従来ルートは約40㎞で65分だが、中央環状新宿線経由だと約41㎞と距離はわずかに伸びるものの所要時間は50分に短縮する。時間短縮の幅はそれぞれ18分と15分。この評価は立場で異なるところだが、状況に応じた経路選択の幅の広がりを加味すれば、首都高速道路の利便性は一段と向上したといっても過言ではない。
陶業分野も、他の産業同様に配送効率化が課題だが、その課題解決を目指して首都高速道路の前向きな利用意識が高まりつつある。
(「陶業時報」2010年6月25日号掲載)
2009年7月のGIFTEX会場
受注・販売を目的とした商談専門展の「第5回国際雑貨EXPO」「第2回ベビー&キッズEXPO」「第1回ファッション雑貨EXPO」「第1回テーブルウェアEXPO」「DESIGN TOKYO~第1回東京デザイン製品展」(以上5展総称・GIFTEX)を開催する。
同展は4年前から世界中の雑貨が一同に出展するイベントとして、毎回右肩上がりで出展社、来場者数が増えており、今回は前回の2倍の約900社の出展社数で開催される。
今まで「国際雑貨EXPO」内で食器などのテーブルウエア商材を出展していたが、「テーブルウエア商材が一同に集まる商談専門展を作ってほしい」との声から「テーブルウェアEXPO」が企画された。陶磁器業界では(株)アイトー、石川県九谷陶磁器商工業協同組合連合会、(有)カネ芳製陶所、(株)ヤマキイカイが出展を予定している。
同じく今回から開催となる「DESING TOKYO」は、前回までの「デザイン雑貨EXPO」をよりデザイン性に特化して、売れるデザインを発信し続ける展示会として新たに企画。出展に関しても、川崎和男、藤巻幸夫氏ほか2名の審査委員によって展示会のコンセプトと照らし合わせた審査を行い、クリアしたところだけになる。
また、これに先駆け4月19日に東京ビッグサイト会議棟1階レセプションホールで、出展企業と出展検討企業を対象に成功するための特別説明会を開催した。
2010年1月の開催では、従来他の会場で開催していた3グループが愛知県産業労働センターに集結。 写真は同センター2階の陶生会、ニュー全陶会の会場
今年の下半期の商戦を占う、業界恒例の一大イベント、秋・冬向け新作を発表する展示会「第34回名古屋テーブルトップショー」(主催・NTS運営協議会)が6月1-3日に、愛知県産業労働センター、吹上ホール、クレールワンダーランド、ナディアパーク・デザインセンタービル(ロフトビル)、名古屋国際センタービル、ロイヤルパークイン名古屋の6会場で開催する。
参加メンバーは23グループ・209社。陶磁器をはじめ、グラスやガラス食器、漆器や箸、プラスチック類や金属製品などの異業種企業やギフトグループなどが積極的に新商品・新企画を開発し、新たな販売戦略を打ち出す。日程は、ナディアパーク・デザインセンタービルで開催する美瀬肥うつわ展のみ1-3日の3日間で他はすべて6月2、3日の2日間の開催となる。今回は、グループの再編成が多くみられるのが特徴。前回、ニュー全陶会、陶生会合併展示会として開催した両グループが、旬香集陶の新統一グループで愛知県産業労働センターに出展。ターミナルメンバーズは、ヤングメンバーズの西日本陶器(株)と松本陶器(株)を加えて、新グループNEW LIFEメンバーを結成し吹上ホールに出展する。三社合同器倶楽部も、前謙(株)を加えて、新グループ新四社合同器倶楽部を結成し吹上ホールに出展。また、前回、クレールワンダーランドで開催していた彩の友とグループ飛鳥は、今回は吹上ホールに会場を移して開催する。銘選会は、陶和会と合併し同じく吹上ホールに出展となった。NTSでは、各グループが結集して共同案内・宣伝などに取り組み、全国の百貨店・量販店バイヤーや売り場担当者、陶磁器専門店・生活雑貨店などの取引筋を招き、積極的に商談を交わす。
「我が社の一押し商品」企画展
6月1-3日開催の「第34回名古屋テーブルトップショー」(以下、NTS)に出展する「グループ吹上の旋風」は、来場者とのコミュニケーション活性化を図るために、同展会期中に特別企画展「我が社の一押し商品」を開催する。同企画展は、グループ吹上の旋風が出展する6月2、3日、吹上ホール1階の特設企画スペースに出展各社の一押し商品を展示して来場者にアンケートを実施するもの。出展社側が「一押し」する、新しい商品、売れている商品、新コンセプト商品などに対して、ユーザー側がどう受け止めているのか、また新しい商品、いい商品、買って売ってみたい商品などさまざまな考え方を直接聞いて今後の商品づくりに反映させていく。回答者には抽選で3000円から1万円の商品券を進呈する。なお今回のNTSでは、愛知県産業労働センター、吹上ホール、クレール、ナディアパーク・デザインセンタービル(ロフトビル)、名古屋国際センタービル、ロイヤルパークイン名古屋の6会場で開催。今回のグループ吹上の旋風は、「陶和会」と「銘選会」が合併し、「彩の友」が新規加入したため、「陶喜和会」「陶星会」「グループ『創美』」「ともづな会」「春秋会」「陶和会」「炎の会」「彩の友」の8グループ69社で構成している。
名古屋テーブルトップショー詳細 ≫
一人問屋という肩書をもつ日野明子(スタジオ木瓜代表)氏の第2作目にあたる「うつわの手帖『2』ごはん」(A4判、120頁)が、㈱ラトルズより2月22日に発行された。
前作は「お茶」がテーマ、今回はごはんをおいしく食す道具が勢ぞろい。本編は「炊く」「いただく」「おいしくする」「ごはんの友」の四章からなり、全38の作家、工房、法人の品々が紹介される。全国産地を渡り歩けばこその問屋視点から、百貨店売り場に立つ販売員目線から、「作り手」「売り手」「使い手」の三者に日々接する、日野氏ならではのエピソードが詰まっている。
陶磁器は白山陶器+森正洋氏、伊賀・稲葉直人氏、四日市ばんこ・4th・MarketM、砥部焼・梅野精陶所、小鹿田焼、東京・上泉秀人氏、長野・小嶋亜創氏などの飯碗や土鍋などが、その技法や制作工程と合わせて紹介。合間には「樽と桶の違い」「箸はいつから使われるようになったか」などのコラムが挟まれ、巻末には、それぞれの道具の扱い方や直し方についても説明がある。全国主要書店で販売中。
(ラトルズ、1,890円)
このほど瓦を分析・研究することで、寺院の創建年代をはじめ当時の政治的状況や豪族の動向、仏教政策などを解き明かした「国分寺瓦の研究・考古学からみた律令期生産組織の地方的展開」(B5判、354頁、梶原義実著)が名古屋大学出版会から刊行された。
梶原氏が全国の国分寺の瓦と在地寺院の瓦を実見調査した本書は、国分寺瓦像を刷新する力作といえる。氏は名古屋大大学院文学研究科講師。考古学の世界で「瓦礫(がれき)」あつかいをされがちな瓦の中から、梶原氏は地方独自の瓦に特に注目した。瓦の文様だけではなく、製作技法からも検討を加えている。古代に存在していた各地の瓦生産システムの実相を全国的に復元した。
特に、中央系の瓦文様との比較に終始しがちな分布論的研究を超えて、造瓦組織が相互に連関・影響し、変容するさまを、地域的・時間的な比較によって把握している。
第一部・国分寺造営までの瓦生産体制―丸平瓦の分析を中心に、第二部・瓦生産の地方的展開と造瓦組織の基本像―国分寺を中心に、第三部・地方造瓦組織の諸様相、第四部・国分寺瓦をめぐる諸問題の四部立てで、国分寺の瓦を多方面から論考していり、従来の書籍にはない良書となっている。
(名古屋大学出版会、定価9,500円)
大樋焼の十代目として、歴代が守り続けてきた技法を大切に引き継ぎながら、創意あふれる作品づくりにも取り組んできた十代大樋長左衛門氏が、著書「陶道無今昔(とうどうにこんじゃくなし)」(A4変型判、216頁)を北國新聞社から出版した。
同著では、百枚余の写真に解説を加える形で、氏が「十代大樋長左衛門」という業統を受け継ぎながら、何を見聞きし、どのような思いを込めて作品と向き合ってきたかが語られている。「常に、人とは違う独自のもの」を肝に銘じてきた氏が、最も大切な展覧会と位置づける日展に出品した作品のかずかずや、人一倍負けず嫌いという氏が「越えられない壁」と語る初代長左衛門の作品など、一枚一枚の写真に加えられる解説を読んでいると、氏と対話しているような気持ちにさせられる。
また八代である祖父、九代目の父、そして自らが出会った文化人や芸術家が、大樋窯で制作した作品やその人柄なども紹介されている。例えば、東京美術学校(現東京藝術大学)からの友人である草月流の勅使河原宏と日本画の加山又造との交流も、二人が制作した抹茶碗の写真とともに語られるという具合だ。陶芸ファンには、興味のつきない内容となっている。
同著の出版を記念して、石川県金沢市の大樋美術館では、出版記念展を三月末まで開催。著作の中で紹介された作品を見ることができる。
(北國新聞社・定価5,000円)
『近代日本の陶磁器業―産業発展と生産組織の複層性』(A5判、404頁、宮地英敏著)が(財)名古屋大学出版会から刊行された。
同書は、近世以来、陶磁器の主要産地である瀬戸、東濃、京都、有田などの産地が、西洋技術の消化吸収と各国市場への適用によって近代的な産業として発展し産地の構造が変容していく姿を描き出すとともに、近代陶磁器業の成功の頂点をなしたノリタケの大工場制の成立を産地構造の展開を視野に入れて浮き彫りにしている。
また、近年再評価が著しいオールドノリタケをはじめとする近代陶磁器の評価と研究に確かな視座を与えるだけでなく、大工場、中小工場、零細企業が層を成して発展していく姿を描いた同書は、経済史上の日本の分厚い中小企業層の形成の起源を考えるうえでも大きな示唆を与える。
(名古屋大学出版会価格、6,930円)
このほど「『陶芸』の教科書」(B5判、128頁)が実業之日本社から刊行された。
すべての項目がQ&A方式でわかりやすく記載されている。陶芸の趣味を1から学びたい人に好適だ。構成は、土や釉の原料、成形から焼き方までを解説した「技法編」とやきものの歩みが簡潔にわかる「歴史編」からなる。
Q&Aを読み解きながら、初心者に必要なやきものの技法や歴史が具体的に体得できる作りになっている。編者は、美術館館長の矢部良明氏と「つくる陶磁郎」編集長の入澤美時氏、陶芸家の小山耕一氏。
(実業之日本社、定価1900円)
東京・表参道にある普段使いの器の店「うつわのみせ大文字」の店主内木孝一氏著「内木孝一の一生使える器選び」が出版された。
著者の内木氏は、印刷会社勤務後、器好きが高じて食器小売大手のたち吉に入社、販売や企画などの経験を積んで1982年に独立、陶磁器の作り手とも交流が深く流通にも通じた和食器を知り尽くした人物。
1章の「ここが知りたかった!和食器の素朴な疑問」から、2章「知って得する器選びマル秘常識」、3章「和食器の使い方&お手入れのマル基常識」、4章「差をつける、盛り付け&テーブルコーディネイトのポイント」、5章「料亭に行っても自慢できる、和食器のうんちく」、6章「知っておきたい輪食器カタログ」まで、和食器の基本的な知識からうんちくまで網羅し、作家名や値段にとらわれない普段使いの食器選びのポイントをプロの目から分かりやすく解説している。
読者設定は、和食器好きの人、和食器選びに自身の持てない人など一般消費者がターゲットだが、流通や小売業など業界関係者が読んでもハンドブック的に役に立つ作りとなっている好著だ。
(講談社、1,400円)
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日本デザインコミッティーと松屋による展覧会「デザイン物産展ニッポン」の書籍版が9月6日、美術出版社から発売される。企画・構成は同展のコミッショナー・ナガオカケンメイ、制作は日本デザインコミッティー。
同展は、デザインを切り口にした物産展として、8月27日から9月1日まで東京・松屋銀座で開催。同書は、そこで出品した物産全235点を写真とコメント付きで紹介し、展覧会と同様に分類した5つのデザインピースに、6つ目の「旅+Design」を追加している。デザインに興味をもつ人向けに、各都道府県別、1泊2日のトラベル提案を掲載することで、全国の物産カタログとしてだけでなく、旅行ガイドブックとしても機能するよう工夫しているのがこの本の心憎い「デザイン」だ。ページ欄外に掲載された各県の人口、面積、特産物などのデータは、地域の理解を深める上で大いに役に立ちそう。
このほか、同コミッティーメンバーや、デザイン関連の事業に携わる著名人のデザインに対する熱い想いをつづったコラムや風景写真が挿入され、読み物としても楽しめる一冊となっている。
(美術出版社、2,625円)
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