国分寺瓦の研究 [著]梶原義実
このほど瓦を分析・研究することで、寺院の創建年代をはじめ当時の政治的状況や豪族の動向、仏教政策などを解き明かした「国分寺瓦の研究・考古学からみた律令期生産組織の地方的展開」(B5判、354頁、梶原義実著)が名古屋大学出版会から刊行された。
梶原氏が全国の国分寺の瓦と在地寺院の瓦を実見調査した本書は、国分寺瓦像を刷新する力作といえる。氏は名古屋大大学院文学研究科講師。考古学の世界で「瓦礫(がれき)」あつかいをされがちな瓦の中から、梶原氏は地方独自の瓦に特に注目した。瓦の文様だけではなく、製作技法からも検討を加えている。古代に存在していた各地の瓦生産システムの実相を全国的に復元した。
特に、中央系の瓦文様との比較に終始しがちな分布論的研究を超えて、造瓦組織が相互に連関・影響し、変容するさまを、地域的・時間的な比較によって把握している。
第一部・国分寺造営までの瓦生産体制―丸平瓦の分析を中心に、第二部・瓦生産の地方的展開と造瓦組織の基本像―国分寺を中心に、第三部・地方造瓦組織の諸様相、第四部・国分寺瓦をめぐる諸問題の四部立てで、国分寺の瓦を多方面から論考していり、従来の書籍にはない良書となっている。
(名古屋大学出版会、定価9,500円)