キヨミズヒロシ展-清水九兵衛・七代清水六兵衛の原象


七代清水六兵衞(1922-2006)の、襲名前の貴重な作品を集めた「キヨミズヒロシ展―清水九兵衞・七代清水六兵衞の原象―」が、東京・芝のt.galleryで、5月27日まで開催されている。

kiyomizuhiroshi

襲名前の作品約50件を展示

六代の長女と結婚。陶芸の名跡である清水六兵衞を継ぐ立場となった氏は、しかし四十代半ばにして作陶を中止。現代彫刻の道に入り、清水九兵衞として多くの作品を手がけた。世界的に認められた彫刻家として活躍したことは、広く知られている。その後先代の死去に伴い、1981年に七代目を襲名するが、陶芸を再開するのは1987年以降で、約20年間のブランクがある。

同展では、表に出ることの少ない襲名前の作品約50件を展示。出品された作品は、オブジェから花瓶、茶碗、酒器、急須、珈琲碗、鉢・皿などの食器類まで様々だ。伊羅保の作品が多いが、他にもマット系の釉薬を用いた作品や、赤絵を施した作品、金箔を焼き付けた作品などがならぶ。

よく眺めると、小さな皿にも七代らしい形へのこだわりが、随所に見られる。分厚い土で作られたずっしりと重い花器からは、土のひずみを許さないという強い思いが伝わって来るようだ。また、薄く作った花器の上部に切れ目を入れ、その近辺を大きくへこませた造形の作品もあり、分厚いものから薄く変形するものへと、移っていく作品の変遷も興味深い。

やめる直前に制作していた薄く変形する作品は、20年後の復帰作品にも受け継がれており、初期のこれらの作品が、襲名後の作品の原象となっている。八代清水六兵衞氏によれば「九兵衞として仕事をするようになってから、以前の作品を自分で壊したため、襲名前の作品はあまり残っていない」とのこと。七代の芸術の軌跡を辿る上でも、貴重な作品群といえるだろう。