山手トンネル開通で渋滞緩和、求められる店舗配送の効率化
陶磁器業界の需要主体は生活必需品である食器類。陶磁器専門店や量販店、生活雑貨店など幅広い小売業種で扱われている商品だが、その多様な小売形態および購買行動の変化が配送の難しさにつながっている。
東京都の産業統計によると、都内の家具什器機械器具カテゴリーの小売店数は約8,200店舗(2007年)で小売業種の第3位に位置づけられている。生活アイテムを扱う主要小売業種だが、陶磁器を扱う専門店となると、量販店やライフスタイル提案型の生活雑貨ショップに押され、専門店舗数は近年減少傾向にある。ショッピングモールの誕生で近隣の専門店が閉店に追い込まれるケースも目立つ。つまり、専門店密度が低くなる方向であり、量販店や陶磁器を少量扱う店舗が広い地域に点在する形となっており、これが配送効率の悪化につながっている。
陶磁器の末端物流について、都内に本拠を構える陶磁器卸の担当者は首都高速道路利用と絡めて次のように語る。
「都近郊の小売店に配送する場合は首都高速道路を利用して配送したり、配送量や配送先の立地に応じて運送事業者に依頼したりと条件に応じて使い分けているが、点在する都内の小売店に対しては条件的に一般道路を走って配送するほかない。そういう意味では都内の一般道路の渋滞緩和を望むところである。特に渋谷周辺は交通が混みやすい地域であり、山手トンネル開通による交通分散効果で渋滞緩和が進むことを期待したい」
ちなみに、陶磁器業界の山手トンネル開通のとらえ方は、瀬戸に代表される陶磁器産地と消費地間の拠点間輸送、特に関東以北への輸送において、首都高の都心環状線を経由せず、東名・用賀から常磐道や東北道へ乗り入れられるようになったこと、それに伴う時間短縮効果を大きなメリットとして評価している。
広範囲に点在する小売店舗。そうした条件を前提に配送効率化を目指すには配送システムを再構築するほかない。そのためには陶磁器メーカーや卸はもちろんのこと、小売店舗側の協力を含めて多角的な検討が求められるところだが、ここにきて、配送効率化の考え方に環境負荷抑制や物流コスト低減といった新たな視点が加わり、首都高速道路の利用メリットを改めて見直す動きが出始めている。
(「陶業時報」2010年7月5日号掲載)